2022年12月と2024年1月に燃料別の暖房コストを比較してきました。
今回はさらに一歩進めて暖房器具別のコストを比較してみたいと思います!
ただし暖房器具の場合は、燃料別の暖房コストの時と違って、家の断熱性能とか器具の使い方によっても結果が変わってきます。
そんな事もあってか、インターネットで暖房器具のランニングコストを比較したサイトをみると、1時間使用した時のランニングコストとか1日8時間使用した時のランニングコストという場合が多いみたいです。
でもこれだと、それぞれの暖房器具の暖房能力を考慮していないんですよね。20帖のLDKを、1時間ファンヒーターで暖房した場合と、同じ時間電気ストーブで暖房した場合、1時間後の室温って絶対差がでます。
どうすると実際に近い形で比較できるかな~と色々と考えた結果、以下の条件を設定しました。それは・・・
『床面積30坪・天井高さ2.3mの家の中の空気を0℃から20℃に暖めるのに必要なコストを求める』
という事にしました。
1泊2日の家族旅行から冷え切った家に帰ってきてすぐに暖房をオン。そしてだんだん暖まっていくみたいなイメージで。
比較するにあたり
・燃料の単価は、以前計算した長岡地域での単価2024年1月verを使用します。
・比較する暖房器具は、灯油ファンヒーター、ガスファンヒーター、電気ストーブ、エアコン、ペレットストーブ。
・それぞれの器具のカタログ値を使用し、出力が変わるものは、最小・最大・定格出力など何種類か出してみる。
とします。
また、上記の条件を設定しましたが、実際のお家では程度の差こそあれ暖房した熱は逃げていきますし、室内の家具などの物の温度が上がるのにもエネルギーが使われるので、室温を20℃上げるにはもっとエネルギーは必要になりますので、その辺はご了承ください。
とりあえず、器具ごとにコスト差が出るのかどうか知りたいなという事で。
空気の温度を20℃上げるために必要なエネルギーは?
まずは、「床面積30坪・天井高さ2.3mの家の中の空気を0℃から20℃に暖める」のにどれくらいのエネルギーが必要なのかを求めます。
計算の過程を載せていっても、無駄にダラダラと長くなっていくだけなので、使う数字と式だけ載せます。
- 床面積 100(㎡)(30坪×3.3㎡)
- 体積 230(㎥)(天井高さ2.3m)
- 空気の密度 1.161(kg/㎥)
- 比熱 1006(J/kg・℃)
- 熱量Q(J)=質量m(g) × 比熱C(J/g・K) × 温度変化ΔT(℃)
- 3600(J)=1(Wh)
を計算すると、家の中の空気温度を20℃上げるのに必要な熱量は5.4(MJ)=1500(Wh)となりました。
この熱量を創り出すのに必要な各暖房器具のランニングコストを求めていきたいと思います!
電気ストーブの場合
最初は電気ストーブです。
なぜかというと計算しやすいので(笑)。器具自体も手軽で使いやすいし。
機種はインターネットで調べて上位に出てきた山善さんのDC-S097にしたいと思います。
電気ストーブだとほぼ消費電力=暖房能力なので弱だと450(W)、強だと900(W)ですね。
この暖房器具を使って、4.5(MJ)の熱量(=1500Wh)を創り出すためのコストを求めます。
計算は・・・長くなるので省略します。
暖房能力(W) | 必要暖房時間(時間) | 暖房コスト(円) |
---|---|---|
弱:450 | 3.34 | 46.62 |
強:900 | 1.67 | 46.62 |
結果、電気ストーブのコストは46.62円となりました。
どんなですかね~。なんだか安い気がします?
ただ、20℃温度が上がるのに、弱運転だと暖まるのに3.34時間(≒3時間20分)、強運転でも1時間40分かかるのはキツイですね。
これを指標として他の器具を見ていきましょう!
灯油ファンヒーターの場合
次は灯油ファンヒーターいってみましょう。
機種は、新潟なのでコロナさんとしたかったのですが、暖房出力と燃料消費量がすぐに分かったダイニチさんのFW-4723SGX(12畳用)にしたいと思います。
灯油のファンヒーターなので灯油の他に電気も使いますね。そして暖房出力を変える事ができるので、最小と最大暖房出力の時のコストを出してみます。
暖房能力(kW) | 燃料消費量(L/h) | 消費電力(W) | 必要暖房時間(時間) | 灯油代(円) | 電気代(円) | 暖房コスト(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
最小:0.91 | 0.088 | 70 | 1.65 | 18.45 | 3.59 | 22.04 |
最大:4.70 | 0.457 | 153 | 0.32 | 18.58 | 1.53 | 20.11 |
結果、灯油ファンヒーターのコストは20~22円くらいでした。
電気ストーブの半分くらいのコストで、しかも暖房時間が短いですね。
ガスファンヒーターの場合
灯油ときたら次はガスファンヒーター(都市ガス)をみてみましょう。
機種は北陸ガスさんのカタログに出ているノーリツ製GFH-4007Sにしてみます。
ガスファンヒーターもガス消費量=暖房能力みたいですね。
暖房能力・ガス消費量(kW) | 消費電力(W) | 必要暖房時間(時間) | ガス代(円) | 電気代(円) | 暖房コスト(円) |
---|---|---|---|---|---|
弱:0.76 | 15 | 1.98 | 18.94 | 0.93 | 19.87 |
強(定格):4.07 | 15 | 0.37 | 18.94 | 0.18 | 19.12 |
結果、ガスファンヒーターのコストは19円くらいでした。
灯油のファンヒーターよりちょっと安いくらいですね。
ペレットストーブの場合
続いてペレットストーブです。
機種はもちろん当社事務所で使用している、さいかい産業さんのSS-1です。
現在は新越ワークスさんになっています。
詳細な仕様があったので、そちらを参考にしました(こちら)
暖房能力(kW/h) | 燃料消費量(kg/h) | 消費電力(W) | 必要暖房時間(時間) | ペレット代(円) | 電気代(円) | 暖房コスト(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
最小:1.90 | 0.5 | 90 | 0.79 | 25.60 | 2.21 | 27.81 |
最大:6.50 | 1.65 | 90 | 0.24 | 25.67 | 0.68 | 26.35 |
結果、ペレットストーブのコストは26~27円くらいでした。
ファンヒーターに比べると少し高いですね。
エアコンの場合
最後はエアコンです。
機種は三菱さんのズバ暖KXVシリーズの10帖用。
カタログに最小・最大・定格暖房能力の3つについて消費電力が載っていたので、それぞれの暖房コストを計算してみます。
暖房能力(kW) | 消費電力(W) | 必要暖房時間(時間) | 暖房コスト(円) |
---|---|---|---|
最小:0.6 | 105 | 2.50 | 8.40 |
定格:4.0 | 890 | 0.27 | 10.57 |
最大:7.6 | 1980 | 0.20 | 12.44 |
結果、エアコンのコストは8~12円くらいでした。
今回の比較の中では一番安いですね。
そして、同じ電気だけを使う電気ストーブと比べるとコストにかなり差があります。
まとめ
という事で、『床面積30坪・天井高さ2.3mの家の中の空気を0℃から20℃に暖める』という条件で、暖房器具のコストを比較した結果は、
エアコン < ガスファンヒーター < 灯油ファンヒーター < ペレットストーブ < 電気ストーブ
となりました。
ちなみに燃料別だと、灯油<都市ガス<ペレット<電気 の順番だったので、単純に燃料が安ければ暖房コストも安いとはなりませんでした。
個人的には、ペレットストーブのコストがもっと安いのを期待していましたが残念。
注目は、同じ電気が熱源のエアコンが最安で、電気ストーブが最もコスト高だった点です。
電気ストーブは電気を熱に直接変換して暖房します。だから1の電気エネルギーから1以下の暖房エネルギーしか取り出せません。
一方、エアコンは電気でヒートポンプを動かすことによって大気中の熱を回収してそれを暖房に使います。上記エアコンの定格暖房能力時で考えると、1の電気エネルギーを使って約4.5の暖房エネルギーを創り出します。
短時間やスポット的な使用なら気にならないかもしれませんが、このコスト差を知ってしまうと電気ストーブを使うのをためらってしまいますね。
コスト的には差がありますが、吹き出し温度や手軽さなどそれぞれの暖房器具にはそれぞれの良いところがあります。
住まいの暖房器具を選ぶときの参考にしてみてください。