人は信じたいものを信じる
楽しい話や、思わずスカッとするようなカタルシスを感じる話は、聞いていて気持ち良いものですね。
でも当然ながら世の中、そんな耳ざわりの良い話ばかりではありません。
親しい知人でもなく、知り合って間もないか、親しくもない人から、とても不幸な目にあったことや愚痴話を聞かされたとして、大いに共感し、同情して力を貸し、金品を提供できる人は、ピュアな若者ならいざ知らず、分別盛りの齢を重ねた人物ならば、人格者か、あるいは愚か者扱いされるもしれません。
信じる根拠
私事ですが、どこか夢見がちで生活感の無い知人がおりまして。
その知人が言うには、ニューヨークの9.11ハイジャック事件は米政府の自作自演、ユダヤ人が世界を支配している、東日本大震災の地震はアメリカが地震装置を発明して津波の実験をした結果である。
その証拠は、自分が仕事で米軍人の家に行った時、奥さんに津波の真相を教えたら、なぜあなたがそんな重大な秘密を知っているのか、と驚かれたから云々。
あれだけの被害の震災に、軽率過ぎると根拠を問い質したら、真実が書かれた書物を30冊読破し、自ら導き出した真相なのだそうです。
我田引水という言葉が頭をよぎりました。
起きた事実を、どのように捉えるかは、他者に害を与えない限り、何を信じようとまったく個人の自由ではありますが。(まさか、彼の主張通り、後世にその真実が立証されたりして？)
アメリカで起きたあの事件
昨年のアメリカ大統領選挙は現職のトランプ氏が対立候補のバイデン氏に敗れました。
僅差だったことで確定が遅れ、結論が出た後も混乱が続きましたね。
そして世界中が震撼した1月6日のトランプ支持者による議事堂襲撃。
映像の中で異彩を放ったのが、野牛の角の被り物とハデなメーキャップのＱアノン信奉者でした。
Ｑアノンとは極右の陰謀論で、悪の秘密結社と闘うトランプ氏を神に遣わされた救世主であり、英雄として崇拝しているのだそうです。
秘密結社なるものの存在がリアルに現実の世界で語られ、国会に乱入する前代未聞の暴動を引き起こした事件は、直前にトランプ氏が集まった群衆を演説で扇動したことが引き金になったと言われています。
デマを信じ多くの逮捕者を出し、裁判にかけられ、服役したトランプ支持者たちですが、当のトランプ氏は退任の際、恩赦もしなかったそうです。
特殊詐欺(オレオレ詐欺)を信じやすい人
テレビや新聞で数えきれないほど報道されても被害が止まない特殊詐欺。
おそらく誰しもが自分は大丈夫と思っていそうですが、その場になると、ころっと騙されてしまうのだそうです。
取りあえずの撃退方法は、「ウチにそんな大金、あると思うの？」と言ってみることらしいです。
信じやすい人柄の良い方は、常にこの呪文を覚えておくといいかもしれません。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2021年夏号No.152 に収録した内容です。
