GomameのTubuyaki Vol.147

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さくら さくら 弥生のそらは

 

 春に咲く花は数しれずありますが、何と言っても「桜」に勝るものなし!と思う方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
 桜は、満開の花の下で飲食するお花見やおめでたい席の桜湯、そして開花の時期が卒業式や入学式に重なるため、晴れがましい行事にまつわるものが多いですね。
 梅も椿もツツジも春を美しく彩りますが、桜との違いは、暮らしに密着した季節感と生活感、満開の華やかさかもしれません。
 神話では絶世の美女コノハナサクヤヒメは桜の化身です。

ポトマック河畔でお花見を 

 奈良県吉野の一目千本、皇居の御濠の千鳥ヶ淵公園、秋田県角館の武家屋敷に咲く枝垂れ桜などなど、全国的に広く知られた桜の名所や、各地方に地元で親しまれている名所が数多くありますが、それらの多くがソメイヨシノという品種のようです。
 葉がまだ芽吹かないころに薄ピンクの花びらが一斉に開花し、木全体を彩る美しさ。
 花期が短く儚げに散る様は、古今を問わず日本人の情緒に強く訴えかけるものがあります。
 国外で有名な桜と言えば、百余年前に日本から贈られた桜の木が起源というアメリカ・ワシントンD/Cを流れるポトマック川の2,000本もの桜並木ですね。
 毎年「全米さくら祭り」が開催され、大きなイベントのようですが、かの国では日本のようなお花見のピクニックはしないのでしょうか。
 花の下で飲食を楽しむのは日本のみ、とのことなので、ポトマック川の桜は見て愛でるだけ。
 花より団子とはいかないようです。

西行(さいぎょう)法師の桜

 『願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ』
 願うことは2月15日ごろ、満開の桜の下で春に逝きたいものだ。
 今から800年前に生きた西行という歌人の有名な和歌です。
 その日は釈迦の命日であり、旧暦(月の満ち欠けを基にした暦)では満月にあたります。
 2月は太陽暦では3月下旬から4月上旬。
 その願い通り、西行は2月16日に世を去りました。
 花冷えの、満月から少しだけ欠けた十六夜に、爛漫の桜を見ながらの大往生だったかもしれませんね。
 72歳は当時としては長寿だったでしょうか。
 西行は生涯に2,090首の和歌を残したとされますが、そのうち230首が桜の歌でした。
 出家したのは現在でも花の寺として桜で有名な京都の勝持寺です。
 西行はよほど桜を愛していたのでしょうね。
 終焉の地も、後世に桜の名所になりました。

ソメイヨシノの正体

 西行のころの桜はヤマザクラだったと思われます。
 全国の名所を席巻するソメイヨシノは、幕末ころにできた新しい品種。
 実生ではなく、接ぎ木で増やすので、どのソメイヨシノも元は一本の木のクローンということになりますね。
 今年のお花見は、新型コロナウイルスで静かな花見になりそうです。早く終息してほしいと切に思います。

この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2020年春号No.147 に収録した内容です。

o-goshi

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