寒い雪の日は、ミステリーがよく似合う
アガサ・クリスティ、コナン・ドイル、エラリー・クィーン。
推理小説の分野で燦と輝く不滅の作家たちです。
すでにエラリー・クイーンの中の一人が亡くなって30年以上、クリスティは42年にもなりますが、その作品群は古めかしくもありながら単なる娯楽小説を越えて古典となり、未だに読者が絶えません。
ミステリーの女王「アガサ・クリスティ」
生涯に出版したミステリーは長編だけでも156作、中短編は150余、他に戯曲。
イギリス本国はもとより、翻訳されて世界各国で10億部以上が出版されているそうです。
謎を解決するのは灰色の脳細胞を持つ名探偵エルキュール・ポワロと、犯罪とは無縁そうな静かな村に住む老嬢ミス・マープル。
皆様にはどちらのキャラクターがお好みでしょうか。
作品は「オリエント急行の殺人」、「そして誰もいなくなった」が特に有名です。
両方とも繰り返し映画化やドラマ化され、日本を舞台に移して作られたドラマもありますね。
クリスティの名前は知らなくても、ストーリーを聞けばそれと思い当たるかもしれません。
発表当時は斬新なトリックでしたが、現在では犯人も筋の運びもすでに広く知られています。
それでも何度も視聴化されるのは、謎解きもさることながら、共感する人間性がしっかりと原作に描かれているからではないでしょうか。
何の予備知識もなく「アクロイド殺し」を最初に読んだ時の騙された!感は忘れられません。
日本のミステリーの名作「不連続殺人事件」
江戸川乱歩、松本清張、東野圭吾など錚々たる大家の中で、推理作家ではない坂口安吾の作品が名作に挙げられていますが、何と70年も前の黴が生えそうな昔の小説なのです。
戦後間もない山奥の大邸宅。奇人変人ばかりの登場人物群と安吾独特の語り口が、時代のムードを醸し出しています。
坂口安吾は新潟市に生まれ、作品の舞台に想定した邸宅は伯母と姉の嫁ぎ先、松之山の大地主村山家で、安吾が若い頃何度も逗留し、愛した土地でした。
重要な伏線の一つがクリスティの「ナイルに死す」に似ていることが指摘されています。
ミステリー小説の行方
科学の進歩とともに、虫眼鏡一つあれば推理できたホームズ氏の時代は過ぎ去りました。
先人に使われて、新しいトリックが枯渇したと嘆く声もあります。
推理小説から社会派やハードボイルドが出てきたように、今後は高度な医学や宇宙科学をトリックにしたミステリーが人気を博すかもしれませんね。
そんな中で、『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない』くらいのフィリップ・マーロウ探偵並の名言を吐露する主人公が登場したら、推理小説に新しい魅力が加わるかもしれませんね。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2018年1月号No.135 に収録した内容です。