『殉愛』~再び 騒動のゆくえ
日々新しいニュースが流れ、目まぐるしく通信手段が発達する昨今、世の中の動きは一層早くなったといわれます。
次々と新しい事件が起き、古い話題は埋もれていきますが、去る7月29日、忘れられた話題のニュースが久々に流れました。
百田尚樹のベストセラー「殉愛」の顛末
関西のTV界で視聴率王と謳われ、抜群の人気を誇ったタレント、歌手の「やしきたかじん」氏の死を巡り、当時のマスコミを騒がせた一連の騒動を覚えていらっしゃるでしょうか。
たかじん氏は2014年1月、約2年間の食道癌の闘病の末亡くなりました。
同年11月、亡くなる3か月前に入籍した32歳下の3番目の妻Sの献身的な看病が、ノンフィクション「殉愛」というタイトルで刊行され、テレビ番組を巻き込んだ派手な宣伝で32万部のベストセラーに。
著者は、あの「永遠の0」の百田尚樹。
ところが、故人の一人娘が、取材もされずに一方的に悪く書かれたとして出版差し止めと名誉棄損等で出版社を提訴。
2年8か月にわたる裁判の一審判決が7月29日にあり、差し止めは認められなかったものの、出版社は330万円の名誉棄損の賠償金支払いを言い渡されました。
未亡人の正体
35歳のS夫人は若いころから裁判沙汰に長けた人。
「殉愛」出版前後に自分への批判を書いた週刊誌や、ネットで発信した個人に訴訟連発、一時は裁判6件を抱えていたようです。
看病の内容への疑問と、金銭への異常な執着。
無償の愛、純情無垢の天使の顔の裏側にイタリア人との重婚疑惑。
4回の結婚、帰化で姓名を何度も変更、整形で別人に変わる。
9年前の裁判記録から発掘された愛人業の事実。
幾つもの詐病疑惑、癌患者に癌が移ったと結婚を強要。
たかじん氏の筆跡と異なる多数のメモを公開。
対立する相手への容赦ない抹殺行為。
数え上げればキリがないほどの興味深い人物でありながら、テレビやマスコミは一切無視。
それはなぜなのでしょうか。
「殉愛」出版の目的
10億円を超えるとされるたかじん氏の遺産。
一人娘を排除しS夫人独占を正当化する目的だったと言われています。
絡む形でタイアップしてドラマ、映画化を予定した芸能界、たかじん氏の冠番組存続が必要だったテレビ界と、人気作家を擁護する大手マスコミ、故人が深く関わった政界がバックにあったため、タブー扱いとなり、報道されることはなくなりました。
既存マスコミとネットの世界
発売直後、利害関係や特定の背景を持たない人々が集まったネットでは、瞬く間にS夫人の帰化前の名やイタリアでの結婚写真、ブログが発掘され、世間の関心を呼びました。
事の是非は置き、今や情報は従来のマスコミだけが発信するものではなく、不特定多数の一般人が参加するネットやSNSも世論の形成に大きな影響力を持つようになるのかもしれません。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2016年8・9月号No.124 に収録した内容です。