柏崎市大字加納 光賢寺の「加納のねず」
「ねず」とはあまり聞き慣れない樹木名ですね。
「ネズミ刺し」が名前の由来で、針のように堅く鋭く尖った葉を、昔はネズミの通り道に刺して鼠害を防いだそうです。
加納地区は、信越線安田駅から国道252号線を十日町方面へ2キロ余進んだあたり。
光賢寺の小高い境内から鯖石川の流れが一望できます。
ねずの木は、境内から更に山道を登った場所にありました。
最近まで裏山全体が墓地だったそうで、名残が未だ残っていそうな、藪に覆われた小高い塚の上に、寄り添うように一体化した二本のねずの木が屹立しています。
一本は枯れて樹皮が剥がれ、痛々しくも白い肌に、生き抜いてきた長い歳月の凄みを感じます。
木の頂上近くには青葉がありました。
樹齢1,000年、樹高14.5m、根元の周囲3m。ねずとしては大木で、柏崎市指定天然記念物です。
不思議なことに近隣には他に自生のねずは見当たらず、実を付けるが落果しても発芽しないそうです。
案内をして下さったご住職のお話しでは、あたりの環境がねずの生育に適していないのかもしれないとのことでした。
千年もの間環境に耐え続け、子孫を残さず朋輩も無く、悠久を生きるこのねずは、実に稀有の存在かもしれません。
墓地の移転の際、鬱蒼と繁った杉を伐採したので、今は日差しをいっぱいに浴びて衰えた樹勢を回復し、千年の命をまだまだ伸ばすのではないでしょうか。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2019年5・6・7月号No.144 に収録した内容です。