西蒲原郡弥彦村 宝光院境内の弥彦の婆々杉
弥彦競輪場の駐車場入口近く、「婆々杉参道」と書かれた案内板の下を通って山側への小道を登ること10数分。
行き止まりの最奥に、一瞥してタダモノでは無いオーラを発する、魁偉な姿の杉の大木が視界に現れます。
樹齢1,000年、樹高40m、幹周7.1m。
赤みがかった木肌は幾つにも割れ、主幹の上方から伸びる大小の枝が、奇妙な形に捻じれる姿は、1,000年にも及ぶ歳月との闘いの痕跡のように感じられます。
「弥彦の弥三郎婆さ」のおどろおどろしい伝説が、新潟県下に様々なバリエーションで伝わっていますが、その昔話の元になるのがこの木なのですね。
伝説は、弥三郎の母が鬼となり、○○(語り手の村)と弥彦山とを、空を飛行して行き来をしていた。
人をさらい、喰うなどの悪行を重ねたが、高僧により改心し、以後は人々や子供を守る良い婆さになった、というものです。
弥三郎婆さはこの木の枝や根元に眠り、悪人の死体を見せしめに枝に掛けたそうです。
その枝はどれだろうかなどと眺め回してしまうような凄みが、この老巨木にはありました。
帰ろうかとした時、ちょうど15~6名くらいの若い女性の一団がやってきました。
深い森の中、森閑とした空気が、一気に華やかで明るい笑い声に包まれ、これこそが善人となった「妙多羅天女」への供養かもと、いささかの思いが湧いたことでした。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2019年2・3・4月号No.143 に収録した内容です。