長岡市六日市町 乳銀杏(イチョウ)
六日市町は長岡市の南部にあり、集落の背後を東山の丘陵が連なっています。
山裾から突き出たような小高い塚の頂上に立つ、一本の株立ちのイチョウの大木。
訪れたのは11月初旬、近隣のイチョウはすでに黄葉の盛りを過ぎ、落葉が始まっていましたが、このイチョウは未だ青葉が茂り、西側がようやく黄葉し始めといったところでした。
樹高25m、幹周囲10.3m~10.6m、樹齢500年。
不思議なことに主幹をぐるりと廻っても、乳イチョウの名の由来となる乳柱(ちばしら)は、今ほとんど見当たりません。
老木のイチョウの幹下部にできる乳柱は樹の栄養が溜まったもので、主幹が折れた時の代わりになるとの説があります。
昔、乳の出が良くない産婦が乳柱を削って煎じて飲んだと伝えられていますが、イチョウの木の栄養ドリンクのようなものだったのでしょうか。
樹の下には庚申塔や赤子を抱いた観音像などの石造物が並んでいます。
イチョウは自生しないので、このイチョウも何かの記念樹か目印として植えられ、信仰の対象として大切に守られてきたのかもしれません。
今は村外れの山と田の境、細い未舗装の道路が通っている場所に立っていますが、往時は六日市は交通の要衝だったとのことですので、この500年間、イチョウの木は対する西山連峰と共にこの地の興亡と人々の暮らしを見守ってきたのかと、いっとき思いを馳せました。
銀杏の実が落ちていないので、このイチョウは雄樹のようです。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2017年12月号No.134 に収録した内容です。