昔の人からの伝言を知る
旅に出かける楽しみに、見知らぬ地名や物珍しい風景との出合いがあります。
初めての土地で聞き慣れない方言を耳にすると、『思えば遠くへきたもんだ』の歌のフレーズが口をついて出てくるような気がしませんか。
日常と離れた環境は心を浮き立たせ、リフレッシュする効果があるのかもしれません。
時には地図を眺め、地名をたどるだけで、実際にその地を訪れなくても、土地の成り立ちや歴史に思いを馳せ、ワクワクできる地図解読巧者になりたいものだと思ったりします。
地名には意味がある
言うまでも無く、人が係る場所には必然的に名前が付きます。
「あちら」や「こちら」では用を成さないからですが、地名の成り立ちは、ある地点を基準にして東西南北や上下中を示したり、その土地の特徴を言い表した言葉かと思われます。
例えば神田、宮田は神社を維持するための費用を賄った田んぼがある所から名づけられた地名とされます。
与板という地名は『良い田』が語源という説があります。
語呂合わせやこじつけのように思えますが、我が住む土地を褒め称えるのは大事なことですね。
案外このような自慢する名づけも多かったかもしれません。
現代でも新しい住宅地には縁起の良い漢字や、美しい印象の名前が付けられています。
全国各地に「いかずち」、「いかづち」という地名があります。
雷や五十土、雷土と標記しますが、かつてカミナリが落ちたという由来が伝えられ、雷神である菅原道真を祀る神社もある村もあります。
しかし、語呂合わせ説から見れば、(開墾に)行ってはならぬ地、農地には向かない地との警鐘の意味があったのかもしれない、とも考えられないでしょうか。
災害を語る地名
今年も様々な災害が起こりました。
地震、台風、大雨による河川の氾濫等々。
今年の灼熱の夏の日々も災害の一つに上げたくもなります。
先人は、災害や天変地異から如何に生活や身を守るか、知恵を絞り経験を重ねて次代へ伝えてきました。
「地名」は、その重要な伝達手段の一つであり、祖先から後世の人々への贈り物ではないかと思われます。
一般に「水」が付いたり、サンズイの地名には軟弱地盤が多いと言われますし、椿は崩壊地形、梅は埋めに通じ、柿は氾濫常襲地、亀は陥没地形を指しているのだそうです。
漢字は当て字ですし、現代人にはわかりにくいのが難点ですね。
災害から身を守る
知人に、しみじみと言われたことがあります。
その人は新しい造成地に家を新築しましたが、何年もしないうちにたて続けに近くの川が氾濫し、被災しました。
その地は環境も良く、今風な綺麗な名前の町名だそうです。
しかし、元々は遊水池を意味する名前の土地だったのです。
ハザードマップだけでなく、土地の歴史も調べるべきだったと知人は反省しきりでした。
自然災害に遭わないためにも昔の伝承は大切ですね。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2019年8・9・10月号No.145 に収録した内容です。