長岡市比礼 旧皇族お手植えの杉
旧栃尾市比礼(ひれい)は、長岡方面から新榎トンネルを抜けてすぐ、山へ向かう途中にある集落です。
村の入り口、諏訪神社参道への大きな道路脇に、豊かに湧き出る名水「宮の清水」の取水場が設けられており、そこから緩やかな坂を上がって脇道に入ると、杉の並木が続いています。
その並木の中の一本に、根元に小さな石柱が建つ杉があります。
石柱に気が付かなければ、手入れされてはいるが、どこにでもあるただの杉でしかありません。
上の写真の左から二本目の杉がそれです。
すらりとしてカッコ良い立ち姿ですね。
右側の高さ50㎝ほどの石柱に「閑院宮春仁王殿下御手植杉」とありました。
当時の皇族に閑院宮春仁王という方がおり、比礼まで来られて記念にこの杉を植えられたということでしょうか。
比礼には東山油田の採油場があり、最盛期の明治のころは大いに賑わったそうです。
戦争で輸入できなくなった石油を確保するため、枯渇して生産量が少ない東山油田の視察に、陸軍の軍人であった閑院宮が派遣されたのかもしれません。
その時期は、おそらく戦争中と考えると、御手植えの杉の樹齢はおよそ75年くらいかもしれません。
東山油田は平成9年まで採掘が続けられ、平成23年に閉山になったそうです。
今でも新清水トンネル内から湧出する石油を集める施設が、トンネル入り口付近にあります。
閑院宮家は戦後の皇籍離脱後、子孫がいなかったため春仁王の死去後、断絶しました。
かつての東山油田の賑わいと戦前の皇族の華やかな存在。栄枯盛衰が偲ばれます。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2020年春号No.147 に収録した内容です。