長岡市寺泊大町 日蓮上人「硯水の霊泉」の松
寺泊の「魚のアメ横」で賑わう海岸の通りから、裏側の道路一本隔てた狭い角地に、趣きのある松が数本あります。
由緒ありげな・・・とその一角を見ると、松の他に小さなお堂と、堂々とした僧形の銅像が建っていました。
向かいに大きな旅館の建物があり、海は見えないものの、対岸の佐渡島に向かって衣の袖を風になびかせ、掌を開き力強く腕を突き出した姿は、日蓮宗の祖、日蓮上人です。
雄渾な気概に満ちるその像は、「日蓮上人獅子吼(ししく)像」というそうです。
小さなお堂は、流刑地としても有名な佐渡へ流された日蓮上人が、1271年、風待ちのため7日間この地に逗留し、弟子への書状を書いた時の硯(すずり)の水に用いたと伝えられる湧水の上に建てられ、泉は今でも湧き出ていると、傍らの案内板にありました。
寺泊は北前船の寄港地であり、江戸時代は佐渡で産出された金の荷揚げ港の一つとして栄えた港町でした。
銅像と霊泉、それらを見守る松の一画は石の柵で囲まれています。
その一本一本に、奉納した人物の名前が彫られていました。
新潟町、長岡町、小千谷町の信者で海運の無事を祈願した人々の名前でしょうか。
訪れたのは秋。
町の此処彼処につわぶきの花が満開でした。
この松から緩やかな坂道をたどると「つわぶき坂」はすぐ近くです。
優しい黄色の花は心を明るくしてくれますね。
青い海とつわぶきの群生は一見の価値ありと思われます。
この記事は当社瓦版 ほっとぽっと2020年夏号No.148 に収録した内容です。