豊かさを紐解くChap.1-4 温熱環境を整える②

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Chap.1 「心地よく暮らす」ために

豊かさを紐解くChap.1-4 温熱環境を整える②~快適な温熱環境に必須なのは~

前回は体感温度についてお話をしました。

体感温度は私たちの条件だけでは決まらずに周辺環境との関係性で決まります。
体感温度は以下の式でざっくりとした温度が分かります。

体感温度は室温と平均表面温度の合計を2で割った値です

室温はそのまま部屋の空気の温度です。
室内の表面温度は、部屋の床・壁・天井・窓などの表面温度の平均値です。

と、ここまでは前回のおさらいと体感温度についてでした。

体感温度の話はここでいったん置いておいて、次は建物と冷暖房について考えてみます。

 2021年4月20日のお昼12時の長岡の気温は20.0℃でした。
暑くもなく寒くもなく適温。ずっとこんな気温なら暖房も冷房もいらなく過ごせそうですが、同じ日の朝7時の気温は9.5℃。
気温は1日の間に変動しますし、日本には四季があり季節によって変わります。

長岡在住者の感覚的には、春・秋は比較的過ごしやすく、夏は必要な時に冷房を使い、冬は起きている間は基本暖房をつけている。

外気温が適温の春・秋はあまり冷暖房の事を考えませんよね。窓を開けて室温を外気温と同じにすれば良いので。
しかし夏と冬は、外気温が高いまたは低いので、室温を適温にするために外気温との温度差を作りだそうとします。

 ポイントは『外気温』に対してという部分です。
適温に対して外気温が季節によって逆転するので話がすこしややこしいですが、冷房も暖房も外気温と室温の温度差を作り出すために使用する!ものですね。

じゃあ、温度差を作るために必要なものは何かというと・・・

温度差を作り出すための熱源。

作った温度差を逃がさないハコ。

の2つです。

①の温度差を作り出すための熱源は冷房・暖房器具の事ですね。

暖房器具についてはたくさん種類があります。
エアコン、薪ストーブ、ペレットストーブ、ストーブ・ファンヒーター、床暖房、蓄熱式暖房機、こたつ、火鉢、囲炉裏等々。器具では無いですが最古の暖房は焚き火ですね。熱源的にも、電気、ガス、灯油、薪、ペレットと多様です。一長一短ありますが選び放題。

しかも暖房に関して言えば、熱を発生させるものは広い意味で暖房になるので、暖房器具じゃなくてもテレビや冷蔵庫などの家電品の発する熱や、さらに住んでいる人も熱を発しているので結果的には暖房(器具では無いけど)になります。
※日射熱取得についてはここでは除いています。

かたや冷房器具は、エアコン一択です。
扇風機は空気が動く事で冷たく感じますが冷気は作れませんので。

冷暖房によって外気温と室温の間に温度差を作ろうとしています
②の作った温度差を逃がさないハコは、家の断熱・気密性能の事です。

断熱は、建物の内外に熱が伝わりづらくする事。熱が伝わりづらいという事は温度差ができるという事ですね。

気密は、空気が出入りしないように建物の隙間を無くし密閉する事。空気の出入りが小さいと暖めたり冷やしたりした空気が逃げづらいですね。

せっかく①で建物の中に暖気(冷気)を作ったのに、それを囲う建物が穴だらけでスカスカだと暖気(冷気)が全部逃げてしまいます。もったいないし、冷暖房費がいっぱいかかっちゃう。そうならないように家の断熱・気密性能が必要となります。

という事で、室温を適温にするために熱源と建物の断熱・気密性能が必要という事は分かりました。

ここから具体的に冷暖房について考えていくんですが、冷房と暖房は真逆の作業なのでここでは冬場の暖房に絞って考えてみましょう。

ここでちょっと確認と補足です。
暖房器具を使って暖房すると、室内の空気が暖められて室温が上昇します。

 室内の平均表面温度は、床・壁・天井・窓などの表面温度の平均でした。
表面温度は建物の断熱・気密性能に左右され、この性能が低いと表面温度が低くなり、大抵の場合、最も温度が下がるのは窓です。

ではでは例を挙げて話していきます。ここに2つの部屋があります。

A.室温が22℃で壁や天井の温度が18℃なら、体感温度は20℃。温度差が小さく快適です。

平均表面温度が高く快適な状態
B.同じく室温は22℃ですが、断熱性能が少し悪く壁や天井の温度が14℃なら体感温度は18℃となります。

平均表面温度が低くヒヤッとする状態

Bの部屋の方が室温は2℃高いのですが、体感温度は低く感じてしまいます。

Bの部屋はちょっと寒く感じるので、体感温度を2℃上げたいと思いますが、そのためには室温を26℃にする必要があるので暖房を強めなければなりません。
暖房を強めるという事は、消費エネルギーが増え暖房費が増えます。

まあ暖房費が増えるのはしょうがないけど暖かくなるならしょうがないか。
室温を上げれば、Aの部屋と同じ体感温度になるから快適になるんでしょ?

・・・残念ながらなりません。

思い出してみてください。
熱移動の放射は離れていても温度の高い物から低い物へ熱が移動しました。

この場合温度の高い物=人→低い物=窓へ熱が移動するので、体感温度は同じですが体温から早く熱が逃げすぎて寒く感じてしまいます。

部屋あったかいんだけど、なんかヒヤーっとする。こんな感じ体験した事無いですか?

冷たい窓へ熱がたくさん移動して寒く感じます

快適性から考えると、断熱性能の低くさを暖房器具で補う事はできない!のです。

結論:快適な温熱環境には高い断熱・気密性能が不可欠です。

ここまで、暖房について考えてきましたが、冷房についても考え方の基本は同じです。
室温と平均表面温度の差が小さい方が快適で、さらに個々の表面温度の差が小さい方がより快適です。

 断熱・気密性能が高い家は、冬暖かい家になります。

夏涼しい家を考えた時も、高断熱・高気密が必要となります。しかし、夏涼しいためにはこれだけでは足りないんです。

「高気密・高断熱を建てたのに、夏暑い!」というのはこれを検討していない場合が多いです。

そのもう一つ必要なものは・・・それは次回に。

o-goshi

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